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zoom RSS オランダの論文に思うこと

<<   作成日時 : 2009/05/15 07:27   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 5 / トラックバック 0 / コメント 4

前回ご紹介したオランダの論文では、食品に栄養素が含まれているということと、それが身体の中で効率よく利用できるかどうかということ(bioavailability:生体利用効率)とは別の話なのだ、ということを示していると思う。

鉄の摂取はマクロビ児の方が多かったのに、鉄欠乏がマクロビ児に見られ、マクロビでない子たちには見られなかった、といったことも上のバイオアベイラビリティーの問題ではないかと思う。
また、植物性食物由来のカルシウムやビタミンD、ビタミンB12も、どうも生体内ではうまく利用されていないようだ

(この研究者およびマクロビ指導者たちは玄米を少し精米するなど食物繊維を減らすようにと指導している。食物繊維のとりすぎが身体に必要なミネラルの排出を促していると考えているようだ。これについてはまたいずれ調べてみたいことではある)

日本のマクロビ界で著名な大森一慧さんの『自然派ママの食事と出産・育児』(サンマーク出版)という本では、子どもに動物性たんぱく質をとらせなくて大丈夫かという質問に対して次のように答えている。

「結論からいいますと、動物性たんぱく質はまったく必要ありません。玄米と大豆(調味料含む)、野菜、海藻で栄養的には十分。・・・玄米と味噌汁の組み合わせは、過不足なくとれ、まさに完璧です」
と答えている。

しかし、大森さんは必須アミノ酸の話しかしておらず、ビタミンB12やビタミンDをはじめ各種ビタミン不足の話はまったくしていない
栄養素が含まれているかどうかだけでなく、毎日摂取できる量でどのくらい含有されているかの量の問題を問わなければならないし、さらに生体内でどれだけ効率よく利用されるのかも考えなければならないはずである。

(植物性たんぱく質も効率が悪いらしい。動物性たんぱく質に比べ燃えカス(尿素窒素)もたくさん出るため、腎臓疾患をもつ人がたくさんとると症状が悪化する、と腎臓病の人の食事ガイダンスに書いてあるのを読んだこともある。)1)

つまり、オランダの論文が示した乳幼児の栄養障害の問題はマクロビ界ではきちんと答えられていないため、「子どもの成長に動物性たんぱく質は必要ない」というマクロビ側の考えはうのみにしない方がよさそうである。
*  *  *
それにしても、意外に思ったのは、海外のマクロビは思ったほど厳格ではないということだ。

今回栄養障害の認められたマクロビ児たち(実に半数にのぼる)に対し、久司道夫氏も含むオランダ国内外のマクロビ指導者たちが加わった共同報告では乳製品や魚をとるよう勧めている

また、海外のcyber macroというネットのマクロビコミュニティーでもこの論文のことが取り上げられており、回答者が次のように答えていた。2)

「子どもには「厳格な」マクロビ食を実践すべきではないという考えには賛成だ。厳格な実践は重い病人のみにすべきだ。この報告は子どもに厳格なマクロビをさせている親たちに警鐘を鳴らしている。これは長い目で見ると健康によくないかもしれないのだ」

さらにこの方が言うには、
「桜沢氏はマクロビでは動物性の食物を食べてはいけないなどとはひと言も言っていない。
フーフェラント(マクロビの創始者)も肉を食べるなとは言っておらず、適度にとるようにと言っている。オランダではもっと動物性食物が許されていいと思う。
スウェーデンでは少し卵をとっているし、魚はもっと多くとっているし、チーズもとっている。」

・・・卵・魚・チーズをとっているのはマクロビじゃないんじゃ???
と思い、かなりマクロビの概念が覆された。

*  *  *
そもそもマクロビは桜沢如一(ジョージ・オーサワとして知られる)によってアメリカに導入されたが、そこでは10段階の食事法が提唱されたという。(これは私も知らなかった)

http://puizakaya.exblog.jp/8008904/

2号食までは、動物性食品が入っている!
確かに、「桜沢氏は動物性食品は食べてはいけないとは言ってない」のだ。
世界にはそっちのマクロビの方が浸透しているので、オランダのマクロビ家庭でも乳製品をときどきとる人がいたり、スウェーデンでも卵やチーズをとっているのだろう。
これでもマクロビって言えるんだね。
(それでもオランダの子どもたちは栄養障害になっているのだけど・・・)

ただし、最終ステージでは、玄米と水だけで生きることになっている。(^^;
これでいろいろと問題が起き、過去に壊血病や脱水症状などで死者が出たりしたことがあるのだ。
(1965年にはこの最終ステージに従ったニューヨークの若い女性(Beth Ann Simonさん)が亡くなったことで訴訟が起きており、桜沢氏は医療過誤で米食品医薬品局(FDA)の家宅捜査を受け、ニューヨークのオーサワ研究所が閉鎖している。
ただし、裁判の結果は無罪だったらしい。でもこの件で評判ガタ落ちになって閉鎖せざるを得なくなったのだそうだ。
亡くなった女性はドラッグをやっていたということだが、これはマクロビ側の人の話だから信憑性はゴシップレベル。)

で、そういう問題もいろいろあったりしたためか、今ではマクロビ食のオーサワバージョンは厳格すぎて、マクロビ指導者からも勧められることはないそうだ
マクロビの歴史についての本も書いている上記の回答者によると、マクロビも歴史とともにだんだんゆるい方向へ様変わりしているようだ。
下記のマクロビの説明では、今や動物性食品については、少量の魚やシーフードを週数回食べるのが一般的だと書かれている(卵、肉、乳製品は通常避けられるそうだが)。3)

・・・週に数回魚やシーフードというのは、かなりゆるい。
私のもっていたイメージとかなりかけ離れている気がする。

*  *  *
日本ではマクロビといえばもっと厳格に実践している気がする。
保育園や学校の給食は拒否して弁当持参、お蕎麦屋さんに入るにもつゆを持参、みたいな。
徹底的に動物性食品を排除しているマクロビアンの生活をネットで散見する。

大森一慧さんの影響だろうか?
(ダンナさんの大森英櫻さんはマクロビでも厳格派な方だそう)

もちろん「ゆるマクロビ」の人もかなりいるとは思うが、そういう人たちは多少の後ろめたさを伴う感じで、「完全マクロビは子どもには危険ですから」というきっぱりとしたスタンスで行っている人はあまり見かけない。
本当は完全マクロビをしたいのだけど事情が許さずとか、私には無理なのでとか、そういうことでゆるになっている人がほとんどのように思う。

乳幼児に完全マクロビを実践することのリスクは、本来ならばマクロビ側の指導者や周囲に広めている人たちの口から警告があってしかるべきだろうと思う。
たとえ「彼らのやり方が間違っていた結果」だとしてもだ。実際栄養障害が出ているのだから、じゃあどういうやり方をしたらどういうリスクがあるのかくらいは入り口の段階で知らせた方が親切だ。
いいことばかり言うのでなく、マイナス面もきちんと伝えた上で、選択してもらうのが良心的だと思うのだ。

オランダでの明らかな栄養障害のリスクは半数にのぼっていたし、ビタミンDやビタミンB12の欠乏にいたってはほぼ全員だ。
予防接種のリスクどころの話ではない。

しかし、そうした情報は、マクロビを勧める人からは一切入ってこない。
もちろん彼らは、「動物性食品をとってはいけないということはないんですよ」と言うことは言う。
「マクロビでは、あれを食べてはいけない、これを食べてはいけない、ということはないんです」と。
しかし、それはあくまで「無理しないでいいんですよ」というニュアンスで語られているのだ。
「完全マクロビは栄養障害のリスクが伴いますから、特に妊婦や乳幼児は適度に動物性食品をとった方がいいのです」とは決して言わない。
だから、真面目な人ほど、赤ちゃんや子どもによかれと思って一生懸命厳格に実践してしまうのだと思う。

*  *  *

オランダの論文で興味深いと思ったのは、「健康のためにマクロビを実践している」という家庭の子の方が栄養障害の程度が比較的軽かったという点である。
乳製品や魚を食べていた家庭である。そういう子どもたちは出生体重も多かったので運動能力やことばの発達もよかったのだ。介入試験に対するビタミンB12の改善度もよかったという。

健康のためにマクロビを始めたのなら、子どもに栄養障害があるといわれればすぐに方針を切り替えて乳製品や魚を足すことは、たやすいことだ。

しかし、思想的なマクロビアンの場合や、マクロベビーという、あまり泣いたり騒いだりしない(大人にとって育てやすい)特殊な赤ちゃんが欲しいと思っている親にとっては、そう簡単にはいかないだろう。
たとえば「牛乳は牛の飲み物で、人間の飲み物ではない」という思想のもとに牛乳をやめた親にとっては、子どもの食事に乳製品を足すことはもっとハードルが高くなるだろうし。

それでも、自分のためにはマクロビの食事を崩せない人たちも、子どもの健康のためなら、聞く耳を持つ親が多いと、米国の報告書に書いてある。

マクロビが単なる健康法であってほしい、という以前書いた私の気持ちは、こういうところにもつながってくる。
健康法を変えるのは簡単でも、思想を変えるのは大変だからね。

乳幼児とマクロビの問題は、もう少し継続して見ていきたいと思う。
また、海藻に体内で利用可能なビタミンB12が本当に含まれているかどうかという話ももう少し突っ込んでみたい。


1)やさしい腎臓病のはなし(下)腎臓病の食事療法
昭和大学藤が丘病院 栄養科  管理栄養士 樋口 久美子

http://healthcare.kissei.co.jp/backnumber/yume_tushin/pdf/no15/no15-02-07.pdf


(腎臓病患者には良質な動物性たんぱく質を60%以上とるようにすすめている)

2)(回答者はRoy Collinsという方で、30年以上のマクロビ実践者であり、陰と陽の本を出版している)

3)(It's About.Comより)
http://altmedicine.about.com/od/popularhealthdiets/a/Macrobiotic.htm

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
とても面白く読ませていただきました。やはり今の情報社会で一番大切なのは情報を鵜呑みにするのではなく何が正しいのか自分で判断し、自分が正しいと思うものをピックアップしていくというのが一番大切なことのように思います。そのためにいろいろな情報を集めるのも必要ですが。
しん
2009/05/15 23:32
しんさん、こんにちは。
そうですね、いろいろなことをいろいろな人が自信たっぷりに言っているので(笑)本当に何がいいのかというのは自分で判断するしかないと思います。
特に情報源というのは大事にしたいと思っています。
何を言っていてもその情報をどこからとってきたのかを明らかにしていないものは信用できないし、実際文献などを列記していてもその論文を読むと全然その人の言っていることとは違う論文だったりしますし。
面倒でも自分の足で歩いて情報を集め(比喩ですが)、自分の目で確かめるということが必要になってくるのだと思います。

特に健康法などはお金儲けがからんでくるだけに、なおさらですよね。
パンプキン
2009/05/16 07:25
ヨーガをしている中でマクロビオティックに出会いましたが、どうにも理論編が胡散くらい感じなので検索していて、このブログにたどり着きました。きちんと検証をしている、公平さを保っている感じ好ましく思いました。私も元養護学校の教員ですが言葉の中に隠れた文化を感じてしまうことがあります。本人にはそんなつもりはないのでしょうが、早い、強い、という一元的価値観に教師自身が意識しない体のレベルで囚われていると思うことがありました。
ヨーガのしーちゃん
2010/05/10 13:03
>ヨーガのしーちゃん
はじめまして。最近ほったらかしのブログにてお返事が大変遅くなりすみません。^^;
>言葉の中に隠れた文化を感じてしまうことがあります。
そうですね、善意のことばの中にこそ、その人のもっている隠れた文化というか価値観が垣間見られることってあると思います。

>早い、強い、という一元的価値観に教師自身が意識しない体のレベルで囚われている
障害児の療育にたずさわっている人たちでさえそうで、なかなかこうしたものは私たちの身体にしみついているのだなと思わされます。
もちろん自分自身も含めて。

コメントありがとうございました。当面このブログを更新する余裕はありませんがまた余裕ができたら少し書こうかと思っています。
パンプキン
2010/05/26 17:33

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