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zoom RSS マクロビ論文F海苔に活性型ビタミンB12が含まれるという論文について

<<   作成日時 : 2009/07/29 07:35   >>

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完全マクロビでも、海苔をとっていればビタミンB12は大丈夫と主張しているページで引用されている論文があるので、今回はそれについて考えてみたい。

たとえばWikipediaでは、「シアノコバラミン」(ビタミンB12のこと)で検索すると「植物性の海苔はビタミンB12として有効であるため、菜食主義者にとって貴重な摂取源となる」と書かれており、その根拠として

鈴木英鷹 「完全菜食とビタミンB_12欠乏 : 完全菜食において海苔はビタミンB_12の供給源として有効である」『大阪ソーシャルサービス研究』Vol.4(20031220)、pp19-25

という論文が挙げられている。
そこでこの論文についてとりあげる。
(その他の論文についてはこの記事の最後にリストアップ)

<まず気づいた点>
本文では、マクロビオテック実践者のビタミンB12欠乏を指摘する論文をいくつか紹介し、「(しかし)この論文では海苔の摂取について言及していない」と述べている。
しかし、私もその論文は読んだが、実際は海苔の摂取について言及している。1)
マクロビ論文Cで紹介したものである。
この論文では、アメリカのマクロビアンの大人110人を対象に、血中ビタミンB12濃度と食品の摂取との関連を調べている。
その結果、乳製品の摂取が少ないと血中ビタミンB12濃度が低くなるが、テンペ、みそ、その他の海藻(ひじき、あらめ、海苔、ダルス他)の摂取とは関連が見られなかったとしている。

なぜ海苔に言及しているのに「海苔の摂取について言及していない」と書いているのか、考えられる答えは、おそらく著者は論文の抄録だけを読んでおり、全文は読んでいないということである。

さらに、ここでは取り上げられていないが、乾燥海苔の摂取はヒトのビタミンB12状態をさらに悪化させるとの研究もある。2)

<血清ビタミンB12値は活性型ビタミンB12とイコールではない>
次に「海苔はビタミンB12の供給源として有効である」という本論だが、その根拠として著者があげているのは、厳格なマクロビ児7歳〜14歳の6名の子どもについて、その血清ビタミンB12値とMCV(平均赤血球容積)を調べたら、基準値内だった、ということだけである。

また20歳以上の厳格なマクロビアン11名の血清ビタミンB12値とMCV値が基準値内であったこと、基準値以下だった1名は海苔をほとんど食べていなかったこと、そして海苔を1日あたり2g食べさせたところ1年後血清ビタミンB12値は基準値内に改善したこともあげられている。

このことを根拠に著者は「(完全菜食でビタミンB12を基準値内に維持するには)海苔の摂取が不可欠であることを示した」としているのだが、血中のビタミンB12値が高いからといって、それが活性型であることにはならない。
なぜなら、不活性型の(ビタミンB12欠乏症を悪化させるおそれもある)ビタミンB12を多く摂取している場合でも、血中のビタミンB12濃度は上昇するからである。3)

ビタミンB12欠乏症の人の中でも、神経症状の出ている人は血中のビタミンB12濃度が高い(つまりビタミンB12類似体の濃度が高い)との報告があり、不活性型のビタミンB12類似体が体内に蓄積しすぎると神経症状が出てくるのではないかとの見方がある。3)

血中のビタミンB12濃度はビタミンB12類似体も測定してしまうため、本当に活性型かどうかを調べるには尿中のメチルマロン酸(MMA値)の測定が必要である。

(これについては著者もわかっているようだが。ではこの前半の調査はなんの意図があったのだろうか?)

<海苔が原因か?>

そこで著者は次に尿中メチルマロン酸の測定も行っている。
これは活性型ビタミンB12を測定できる信頼できる測定法である。

厳格な玄米菜食で育った小中学生6名を対象に、血液検査と尿中メチルマロン酸の測定を行った。
測定にあたっては、採血1週間前の食事内容の聞き取りを行った。

その結果、2名だけ尿中メチルマロン酸値の高い子どもがおり、その子たちの1日あたりの海苔摂取量は2g以下だったとしている。
これだけから、著者は1日あたりの海苔摂取量は2gでは不十分で4g以上必要だと結論づけている。

しかし上記だけからは、海苔がビタミンB12の供給源として有効であるとは到底言えるものでないことは、素人の私でもわかる。

*   *   *
わかりやすい例えをあげるなら、

ミルク育ちの子ども6名と母乳育ちの子ども6名の知能指数を測ったとする。
仮にミルク育ちの子どもの方がIQの平均値が高かったとすると、ミルク育児は頭をよくするのに有効であると言えるかどうか。

もちろん、言えない。
まず対象人数が少なすぎて、「単なる偶然の結果」である可能性が高すぎること。
その差が「意味のある差であるかどうか」も検証されていないこと。
そして何より重要なのが、「他の要因はどうなのか?」ということである。
上の例では、ミルクか母乳かだけに着目し、親のIQの高さとか、生育環境とか、もともとのその子のもっている能力とか、そういうIQに影響しそうな他の要因についてはまったく言及していない。
少なくとも、他の要因については条件を同じくするか、計算の上で補正しなければならないはずである。

で、この海苔摂取の調査であるが、同じことが言えるのである。

海苔の影響かどうかを調べるにはそれ以外の要因をそろえておく必要がある。
私が思いつく限りでは、たとえば
・マクロビ実践期間の長さ(ビタミンB12不足は、マクロビ実践期間が長ければ長いほど顕著であるとされている)1)
・母乳に含まれていたビタミンB12量(ビタミンB12はある程度の年月体内に蓄積されるため(生まれる前に母体からもらった分も蓄えられている)
・もともと本人がもっている、ビタミンB12の吸収能力の違い(ビタミンB12の体内での利用能力の低い子は、ビタミンB12を普通に摂っていてもビタミンB12欠乏になることがある)
・長期的な食事内容のデータ(ビタミンB12は体内に蓄積され、長期間そこから使うことができるため、検査1週間前の食事内容からでは、摂取量の違いはわからない)
・・・などである。

この論文では、そういう補正はしていない。
そういったマイナーな違い(?)を消してしまえるほど対象人数が多いわけでもない。
だから海苔が有効であることは証明されていないのである

極端な話、マクロビ実践期間が長い人で海苔が嫌いな人を集めてきて測定し、マクロビ実践期間が短い人で海苔をたくさん食べる人を集めてきて測定してしまえば、前者でビタミンB12が不足し、後者では不足しないのは海苔に関係なく予測できるのだ。
その結果海苔が有効でした、と言っても証明にはならない。

だから最も信頼できる方法は、素人の私が考えられる限り、二重盲検で(本人にも試験者にも知らせないで)完全菜食の人を海苔を摂取する群と摂取しない群とに分け(他のビタミンB12供給源は与えずに)、一定期間それを続けた上で尿中メチルマロン酸値がどれだけ下がるかを見て比較し、そのデータに統計学的な解析を加えてその差が意味のあるものであるかどうかを見るというものである(他の要因については条件を同じにするか、もしくは計算の上で補正する)。

著者はなぜか、そうした方法を用いていない。
今回の調査では妊娠までの菜食期間の数値が示されているものの、補正もない生のデータが示されているだけである。

そのデータを見ると、例えば妊娠までの菜食期間が11年と最も長い女児(No.3)の尿中メチルマロン酸値は11.5μg/mg/Crと高くなっているし(高い方がビタミンB12不足)、妊娠までの菜食期間が0.4年と最も短期間である男児(No.2)の尿中メチルマロン酸値は3.5μg/mg/Crと低くなっている。
これでは、海苔の影響なのか、菜食期間の影響なのかがわからない。
というか、この表をぱっと見た限りでは、「やはりマクロビ児は一般の子に比べてビタミンB12が不足している。それも、菜食期間が長いほど不足しがちである」という印象を与えるくらいだ。

よって素人から見ても、きちんとした形で海苔の有効性については実証されていないのがわかる。

<タイトルは過大広告>


こうした内容なのに、タイトルで「海苔はビタミンB_12の供給源として有効である」と言い切っている点が気になる。
英語の抄録ではcomsumption of nori may keep vegans from suffering B12 deficiencyとなっており、「有効である可能性がある」としているに過ぎない。
内容的にも、決して「有効である」と言い切れるものではなく、あくまで「可能性がある」ことが示唆されている程度なのに、なぜタイトルが断定的なのだろうか。
(「ちなみに英文のタイトルはVegans (pure vegetarians) and vitamin B_12 deficiency 『ベーガンとビタミンB12欠乏』となっているだけ)

一般の人は論文の内容まで読まずにタイトルだけを見る人も多いだろうから、「ではこの論文で、海苔に活性型のビタミンB12があることが証明されたのだな」と結論づけてしまうだろう。
そして論文のタイトルだけが一人歩きすることになる。
このタイトルを引用して、「海苔はビタミンB12源として有効である」と言えるようになるのだ。

さて、こうなると、著者のことが少し気になる。

著者について検索してみると、この方は
『食養手当て法』という本を清風堂書店から出版している。
これは「大森英桜&一慧監修・鈴木英鷹著」となっている。

つまり、鈴木氏は大森氏と共にマクロビ関係の本を出版している人である。
マクロビ側の人なので、影響する要因の注目の仕方やデータの取り上げ方、処理の仕方が公平に立ったものでないのかもしれない。

著者は本文で「条件さえ整えばビタミンB12欠乏を起こさずに完全菜食を行うことが可能であるという著者をはじめとする研究者の報告を紹介し、完全菜食の安全性に寄与したいと考えている」と述べている。

しかしベーガンの側からも、「海苔はビタミンB12源として信頼できるものとはいえない」とする見解を出している人がいることを強調したい。3)

私は自分の子どもを育てる上で、本当の情報が欲しいと思ってマクロビと健康について調べ始めた。
本当に完全菜食の安全性に寄与するのは、しっかりした裏づけのない話で「大丈夫だ」と安心させる人なのか、それとも「まだ信頼できるとはいえないので、他のビタミンB12源を」と忠告する人なのか。
子どもの健康を考えると、私は後者に思えて仕方がないのだが。

<参考文献・その他の論文>

ネットで検索すると、海苔がベジタリアンのビタミンB12源として有効であるということでひきあいに出されている論文は主にふたつある。
ひとつは上記の
@完全菜食とビタミンB_12欠乏 : 完全菜食において海苔はビタミンB_12の供給源として有効である Vegans (pure vegetarians) and vitamin B_12 deficiency

(鈴木 英鷹・大阪体育大学健康福祉学部)
http://ci.nii.ac.jp/naid/110004688287/

(Google Scholarではヒットしません。右側のPreviewというところをクリックすると、全文が見られます)

もうひとつは
A阿部捷男(あべかつお)(高知女子大生活学部)
(これは検索したのですがGoogle Scholar、一般のGoogle共にその存在を見つけることができませんでした。)
引用サイト
http://www.mansai.jp/nutrition/nu_vitaminb12.html

この他にも、調べてみるとAの阿部氏の同僚である渡辺氏の報告が目についた。

B渡辺文雄(高知女子大生活科学部)
http://www.shc.usp.ac.jp/shibata/H16-3-4.pdf

ビタミンB12の栄養評価に関する基礎的研究

2-II-4 ビタミンB_<12>欠乏メチルマロン酸尿症に対する海苔(スサビノリ)摂取の効果 : 第49回大会一般研究発表要旨 [in Japanese]
http://ci.nii.ac.jp/naid/110002850044/
(これは有料で、一般に公開されていません)

Bについては、機会があったら別途とりあげたい。


1)DR Miller, BL Specker, ML Ho and EJ Norman Vitamin B-12 status in a macrobiotic community. American Journal of Clinical Nutrition, Vol 53, 524-529.
http://www.ajcn.org/cgi/content/abstract/53/2/524
(ネットで全文が読めます)

2)YAMADA K., et al. Bioavailability of dried asakusanori (Porphyra tenera) as a source of cobalamin (vitamin B12). International journal for vitamin and nutrition research. vol. 69, no6, pp. 412-418 (26 ref.) 1999
http://cat.inist.fr/?aModele=afficheN&cpsidt=1239608

3)Carmel R, Karnaze DS, Weiner JM. Neurologic abnormalities in cobalamin deficiency are associated with higher cobalamin ‘analogue’ values than are hematologic abnormalities. J Lab Clin Med 1988 Jan;111(1):57-62.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/3335826

3)Vitamin B12: Are You Getting It?
by Jack Norris, Registered Dietitian
http://www.veganoutreach.org/health/B122002.pdf
この方のウェブサイトは
http://www.veganhealth.org/
(ベジタリアンの健康情報サイトです)

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